わたしはよく、南充浩さんのブログを読んでます。
南充浩 オフィシャルブログ | 繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般とファッション情報を発信
このブログのおもしろいところは、ファッションやアパレル業界をビジネス視点で書いているところ。
繊維新聞の記者、販売員、コンサル...と、アパレル業界を渡り歩いて来た経験に基づき、アパレル業界の問題点を的確に書いていると思います。
このブログによく登場するのが、やれ「本物とは...」だとか「客は分かってない」みたいな、ファッションにこだわりがある人種。
その思想は理解できなくはない。
わたしも履きづらいのが承知でDr.Martensの厚底ブーツを履いたりとか、ストレッチがなく厚手でゴワゴワするようなジーンズを履いたりするような人間です。
しかし、そういうものが一般ウケするかと言われれば、そんな日は来るわけがない。
当たり前だけど、使いづらいし、動きにくいし...で、衣類としてはデメリットばかり。
逆にメリットといえば、昔からある歴史あるものを着ているという自己満足、それを持っているというステータス。
そういうメリットを享受するものを世の中でなんというかというと...趣味だとか、嗜好品と呼ばれます。
生活に密着するものとして衣食住というものがありますが、そういう服はそこから大きく逸脱しているのです。
世の中のファッションはどんどん変わっています。
トレンドもそうですが、どんどん着やすい服、動きやすい服、メンテナンス性が高い服、サイクルが早い服...という方向性が重視されつつあります。
それらと比べ、Levi'sの501やオイルドジャケットというのは明らかに時代に逆行しています。
そういうものが今後ヒットする可能性というのは、何もなければほぼないと考えていいと思います。
なにか、映画とかで有名タレントが着用した...とかでも、今後はなかなかヒットすることはないでしょう。
趣味趣向というのはどんどん多様化していっているのがその理由です。
そんな時代ですから、単純に機能性が高いとか、質が高いとか...そういう理由では服は売れない時代になっています。
ただ、ファッションだけ、服だけを意識していればよかった時代はもう過去のものになったのではないでしょうか。
これからのアパレル企業は、衣食住をトータルで考えなければならない時代になったんだと思います。
例えば、新品の濃紺ジーンズは色移りするという特徴があります。
当然、白い服と一緒に着れませんし、着るシーンを選びます。
のみならず、ソファーや家具にも気を遣わないといけません。
また、白い服というのは汚れやすい、汚れが目立ちやすいという問題があります。
油が飛び跳ねたり、着続けると汗汚れが目立ちます。
逆に、そういう一般的に常識と思われている課題や問題を解決できる服が誕生すれば、それは売れる可能性が高いと言えないでしょうか。
アパレル企業の今後の新商品は、そういった一般的に当たり前だと思われている服の特徴を解決したり、カバーする商品こそ考案していくべきだと思います。
そう考えますと、ただファッションだけでなく...衣食住トータルで考えたり、日常シーンで使った場合を想定して、解決すべき課題や問題を探すところに、ヒット商品のヒントがあるような気がしてなりません。
アパレル業界のみなさん、いかがでしょうか。
わたしは過去、某アメリカ企業のアパレルブランドで働いていました。
そこのブランドは40年以上の歴史ある企業で、従来のやり方に縛られたり、ブランド意識が高いことで、勝機を逃しているのではないか?と感じることが多々ありました。
それは販売している商品だったり、接客の仕方だったり、商品の管理方法だったり...いろんな面で見て取れました。
結果、そのブランドはどんどん凋落していっており、いずれ現在の地位から転落するだろうと見られている状況です。
時代に合わせて変わっていこうとしなかったり、課題点を見つめ直さなければああなるんだろう、というのがよく分かっているつもりです。
本物のファッション、というものを否定する気はありません。
ですが、それはニッチな分野であり、メジャーにはなり得ないのです。
もっと衣食住全体で見つめてみたり、日常シーンでの問題点に着目してみてはいかがでしょうか。
アパレル業界だけでなく、すべての業界において、そこにヒントがあるはずです。